ノブユキ番外編

かつては1週間の個人的収穫を振り返るブログでした。現在は不定期で更新中。

K.カズミとリテラシー

今から20年以上前、開設されて間もなかったネット掲示板2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)に少年が西鉄バスジャック事件の犯行予告を書き込んでいたことが世間の注目を集めた。当時の管理者ひろゆきが「ニュースステーション」(テレビ朝日)のインタビューで語った「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」は、ネットを利用する上での指針ともいえる言葉だ。

 

しかし、時代は変わり、スマートフォンひとつあれば子供からお年寄りまでネットを利用でき、SNSYouTubeなどで誰でも発信できる現代において、嘘を見抜くのは当時よりも難しくなっている。2016年4月には、熊本地震で動物園からライオンが逃げたとのデマツイートが拡散。投稿者が逮捕されるまでに至った。

 

2022年6月1日、世の中のあらゆる説を検証するテレビ番組「水曜日のダウンタウン」(TBS)が、Yahoo!知恵袋で10年以上前から都市伝説化されている「K.カズミ」は実在するのかを取材したVTRを放送した。身長2m超、体重200㎏超え、フライパンを怪力で曲げ、蕎麦の食べ放題で82段…人間離れした伝説の数々に自分は嘘か本当か分からなくなった。

 

番組は、蕎麦82段の記録をホームページに掲載している和食麺処サガミへの取材や探偵事務所への調査依頼を敢行。サガミも社内調査で協力し、K.カズミを目撃した従業員を3名を割り出した。さらに、その従業員への取材で連絡先を知る者に遭遇。ついにK.カズミへのインタビューにこぎ着けたのだ。

 

顔を隠し、音声を加工した状態で現れたK.カズミは、至って普通といえる姿だった。蕎麦を82段食べたのは事実だったが、知恵袋に投稿されているK.カズミは別の人間によるなりすましだったことが判明した。この真相を番組のインタビューを通じて知った本人は「偽物には消えていただきたい」と静かに怒っていた。

 

ニュースサイトでは正体不明の"関係者"の憶測で作られたゴシップ記事がトップ項目に並んでいたり、Wikipediaでは明確な典拠がない情報が誰かによって加筆されている。都市伝説は情報がガセだったとしても嘘のエンタメとして楽しめる側面があるが、このように本人になりすました別人による与太話は単なる名誉毀損である。K.カズミ本人が言った「結局最後にはウソはバレる」はとても説得力がある。あらゆる情報が氾濫する現代のネット社会において、虚と実を見分けるリテラシーを養うことはとても重要であると改めて学んだ1時間だった。

 

この番組が最後に伝えたのは、サガミの蕎麦食べ放題は天ぷらも付いて税込1980円であること。まるで1時間ずっとサガミの宣伝をしていたかのようなオチは水曜日らしいと思った。ちなみに、自分が住んでいる茨城県にはサガミの系列店を含めて店舗がゼロ。これもまた、紛れもない事実である。