ノブユキ番外編

かつては1週間の個人的収穫を振り返るブログでした。現在は不定期で更新中。

あくまでもテレビ

日曜夕方の長寿番組「笑点」(日本テレビ)では、かつて桂歌丸三遊亭円楽(旧名:楽太郎)が罵倒合戦を繰り広げていた。歌丸は「ハゲ」呼ばわりされ、円楽は「腹黒」呼ばわりされ…売り言葉に買い言葉の状態がテレビに映し出され、お茶の間に笑いの渦を巻き起こしていた。

 

実際、この二人はとても仲が良く、歌丸の晩年には円楽が車椅子を押してあげていたこともあったそう。笑点での罵倒合戦をテレビのなかのエンターテインメントとして魅せていた二人の芸人魂を感じる。

 

かつて放送されていた深夜番組「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日)では、ラッパー同士が即興で韻を踏みながら相手を罵倒するMCバトルが人気を博し、ラップバトルが世間でもちょっとしたブームとなった。 バトルラップで圧倒的な強さをみせていたCreepy NutsのR-指定と一緒に組んでいるDJ松永は、MCバトルを見た視聴者による批判で日本のHIP HOPの限界を感じたという。

 

2021年11月13日放送の「マツコ会議」(日本テレビ)に出演した際、松永は「暴力的なところ、倫理的にアウトなところを許容する価値観が日本人と合わない」「男性が女性に言った言葉で炎上したのを見て、これ以上日本だとないんじゃないか」と心の中の葛藤を告白した。

 

それに対しマツコ・デラックスは「テレビだからダメ」「世に出て人に触れてメジャーになった途端に、そこに表現ってものはもはや存在しなくなるかもしれない」と語り、「矢面に立った瞬間にもうそれはピーク」「もうそこから消滅していくものがショーになってるのよ」と説いた。 マツコの言葉に松永は思わず涙し、それを見たマツコがもらい泣きするという衝撃的な展開に。エンタメを表現する側が流す涙に、エンタメを消費する受け手側として身につまされる思いだった。

 

テレビは"マス"メディア。多くの視聴者が目にし、賛否両論が巻き起こってしまうのは致し方ない。しかし、それはあくまでもテレビのなかのショーであり、虚と実を一緒くたにして番組や出演者を批判するのは良くない。芸人が郵便物を勝手に開封する局員を演じるコントで炎上したり、リアリティショーでヒールを演じた女子プロレスラーが視聴者の誹謗中傷を苦に自ら命を絶つこともあった。テレビはテレビとして楽しむべきなのだ。

 

テレビのみならず、この世のあらゆるエンタメが表現ひとつで炎上し消されていく時代。これ以上、表現者たちを自主規制で苦しませないように、受け手側がもっと寛容になってエンタメを楽しむべきではないだろうか。テレビっ子として、自戒の念を込めて。